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夏草が邪魔をする, 2017.06.28

- 夏陰、ピアノを弾く
カトレア・lyrics
貴方にはわからないよ、なんてのは傲慢だ
排気ガス塗れの東京を練り行く
札束で心が買えるなら本望だ。
傷一つない新しい心にして、
いっそ僕の全部、カトレア
君にあげたいのに最後だ
窓際の花瓶には君を挿しておくから
わかっておくれよ
心を買い換えたはいいものの不鮮明だ
空が曇るから何かが晴れないようでさ
札束で見る目が変わるなら本望だ
曇りのない新しいまなこを買おう
いっそ君の全部、カトレア
何も見えないで眠ったら
目が覚めた世界は雲ひとつない鮮やかだ
戻っておくれよ
そして僕の全部が消えて
夏陰の間眠っても
君のいた世界をどこかで思っているから
ほら、いっそ僕の全部カトレア
君に上げたいから最後だ
さよならの時間はわからないようにするから、笑っておくれよ
言って。・lyrics
言って
あのね、私実は気付いてるの
ほら、君がいったこと
あまり考えたいと思えなくて
忘れてたんだけど
盲目的に盲動的に妄想的に生きて
衝動的な焦燥的な
消極的なままじゃ駄目だったんだ
きっと、人生最後の日を前に思うのだろう
全部、全部言い足りなくて惜しいけど
あぁ、いつか人生最後の日、
君がいないことを
もっと、もっと、もっと
もっと、ちゃんと言って
あのね、空が青いのって
どうやって伝えればいいんだろうね
夜の雲が高いのって
どうすれば君もわかるんだろう
言って
あのね、私実はわかってるの
もう君が逝ったこと
あのね、わからず屋って言うんだろうね
忘れたいんだけど
もっとちゃんと言ってよ
忘れないようメモにしてよ
明日十時にホームで待ち合わせとかしよう
牡丹は散っても花だ
夏が去っても追慕は切だ
口に出して 声に出して
君が言って
そして人生最後の日、君が見えるのなら
きっと、人生最後の日も愛をうたうのだろう
全部、全部無駄じゃなかったって言うから
あぁ、いつか人生最後の日、君がいないことがまだ信じられないけど
もっと、もっと、もっと、もっと
もっと、もっと、もっと、君が
もっと、もっと、もっと、もっと
もっと、ちゃんと言って
あの夏に咲け・lyrics
君が触れたら、
た、た、ただの花さえ笑って宙に咲け
君に倣って、て、照れるまま座って
バスの最終時刻 オーバー
いつもの通りバス亭で、
君はサイダーを持っていた。
それだって様になってるなあ。
しがない物書きであった僕は
その風景を描いていた。
隣に座る間も無く消えた。バスが走っていく。
書いて書いてようやく得たものが
妬みとか蔑みとか!
なんかもう忘れたい
君が触れたら、
た、た、ただの花さえ笑って宙に咲け
君が登って、て、
照れる雲も赤らんで飛んでいく
君がいるなら、
た、た、退屈な日々も何てことはないけど
君がいた騒々しい夏もさよなら
誰か応答願う オーバー
雨の街路脇、君は立っていた
片手には赤い
カトレア
君の流した水滴が夕立ちみたく伝っていた
君が泣いてるのに手は動いた
声もかけないで
その顔を書いていた
吐いて 吐いてようやくわかるのが
痛みです 虚しさです
なんかもう馬鹿みたい
満たされるから、
た、た、足りてた分を落として
嫌になるんだよ
それで良かったって笑えるほど
大人じゃないのにさ
君が乗り込む、
バ、バ、バスの隙間に僕の場所はないから
君がいた想像だけが嵩んでいく
今日も人生俯瞰、オーバー
君が歩けば花が咲く
君が歩けば空が泣く
君が笑えば遠い夏
笑う顔が書いてみたい
夕立の中泣く君に
僕が言えるのなら
もう一回あの夏に戻って
君が泣いてる、
と、と、止まらない訳を僕は知っていたい
君に触れたら、
て、て、適当なことでも喋ってみよう
君がいたから、
た、た、退屈な日々も何てことはないのさ
君に笑って、て、照れるまま座って
バスの最終時刻、オーバー
靴の花火・lyrics
ねぇ ねぇ
何か言おうにも言葉足らずだ
空いた口が塞がらないから から
ねぇ ねぇ
黙りこくっても言葉要らずだ
目って物を言うから
忘れていくことは虫が食べ始めた結果だ
想い出の中じゃいつも笑ってる顔なだけ
夕暮れた色 空を飛んで
このまま大気さえ飛び出して
真下、次第に小さくなってくのは
君の居た街だ
靴の先に花が咲いた
大きな火の花が咲いた
心ごと残して征こう、だなんて憶う
そんな夏が見えた
ねぇ ねぇ
君を知ろうにもどっちつかずだ
きっと鼻に掛けるから
清々することなんて何にもないけど
今日も空が綺麗だなぁ
僕の食べた物 全てがきっと生への対価だ
今更な僕はヨダカにさえもなれやしない
朝焼けた色 空を舞って
何を願うかなんて愚問だ
大人になって忘れていた
君を映す目が邪魔だ
ずっと下で花が鳴った
大きな火の花が鳴った
音だけでも泣いてしまう、だなんて憶う
そんな夏を聞いた
ねぇ ねぇ
空を飛ぼうにも終わり知らずだ
きっと君を探してしまうから から
夕暮れた色 空を飛んで
この星の今さえ抜け出して
真下、次第に小さくて
消えたのは君の居た街だ
夏の空に花が咲いた
大きな火の花が咲いた
いつまででも泣いていたい、だなんて憶う
そんな夏が消えた
- 飛行
雲と幽霊・lyrics
幽霊になった僕は、明日遠くの君を
見に行くんだ その後はどうしよう
きっと君には言えない
幽霊になった僕は、夏の終わり方を
見に行くんだ
六畳の地球で 浅い木陰のバス停で
夜に涼む君の手 誘蛾灯に沿って石を蹴った
街の薄明かりが揺れている
何も見えなくたって
何も言わなくたって
誰も気付かなくたって
それでもわかるから
君と座って バス停見上げた空が
青いことしかわからずに
雲が遠いね ねぇ
夜の雲が高いこと、本当不思議だよ
だからさ、もういいんだよ
幽霊になった僕は、
あの頃の景色を見に行くんだ
遠い街の海辺 子供のとき見た露店街
歩き疲れた脚でそこらのベンチで
バスを待って その後はどうしよう
何で歩いてたんだろう
何も知らなくたって
何も聞けなくたって
いつか君が忘れても
それでも見ているから
夏の陰に座って 入道雲を
眺めるだけでどこか苦しくて
空が高いよ ねぇ
このままずっと遠くに行けたらいいのにな
夜しかもう眠れずに
君と座って バス停見上げた空が
青いことしかわからずに
雲が遠いね ねぇ
夜の雲が高いこと、本当不思議だよ
だからさ、だからさ
君もさ、もういいんだよ
幽霊になった僕は、明日遠くの
君を見に行くんだ その後はどうだろう
きっと君には見えない
負け犬にアンコールはいらない, 2018.5.9

- 前世
負け犬にアンコールはいらない・lyrics
大人になりたくないのに何だか
どんどん擦れてしまってって
青春なんて余るほどないけど
もったいないから持っていたいのです
「死ぬほどあなたを愛してます」
とかそう言う奴ほど死ねません
会いたい好きです堪りません
とか誰でも良いのに言っちゃってんのがさ、
わかんないね
もう一回、もう一歩だって 歩いたら負けだ
つまらないって口癖が、僕の言い訳みたいじゃないか
もう一回、もうこんな人生なんかは捨てたい
夏のバス停で君を待っていたいんだ
負け犬だからさ想い出しかないんだ
逃げるは恥だが役に立つとかいうけど正直立てません
大人になりたくないのにいつから
笑顔が上手になったんだ
人生なんて余るほどないし
友達なんかはいりません
最低限の荷物を固めて
あなたに会いに行こうと思いました
堪んないね
5! 4! 3! 2! HOWL!
もう一回、もう一個だって落としても死ねない
負け続けても笑った君が白痴みたいじゃないか
もう一生、後悔したくない僕らは吠えたい
負け犬が吠えるように生きていたいんだ
君のそんな顔なんか見たくもないんだ
人生に名前をつけるなら
希望って言葉は違うだろ
もう何年待っているんだろう、わからないか
君以外はどうでもいいんだよ
それだけはわかっていたんだろ
もう一回、もう一歩だって歩いても言えない
所詮音楽が響くか 何もかもが言い足るものか
もう一回、僕たちにもうアンコールなどいらない
吠え面かけよ偽善者
もう一回、もう一歩だって歩いたら負けだ
世界平和でも歌うか 早く全部を救えよ愛とやらで
もういい、もうこんな人生全部を賭けたい
負け犬なりに後悔ばっか歌って
また夢に負けて、昨日を愛おしんで
爆弾魔・lyrics
死んだ眼で爆弾片手に口を開く
さよならだ人類、みんな吹き飛んじまえ
泣いた顔で爆弾片手 夜が苦しい
安っぽいナイトショーのワンシーンみたいな夢が見たい
今日も出来ませんでした
今日もやれませんでした
青春の全部を爆破したい
君のことを歌にしたい
この日々を爆破して
心ごと爆破して
ずるいよ、優しさってやつちらつかせてさ
ずるいよ全部
この部屋を爆破したい
夢がなきゃ生きられない
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
死んだ目で爆弾片手に街を歩く
誰も見向きもしないんだ 爆弾を翳したとて
ずっと泣けませんでした
ずっと笑えませんでした
青春の全部に君がいる
風が吹けば花が咲く
あの夏を爆破して
思い出を爆破して
酷いよ、君自身は黙って消えたくせに
酷いよ全部
この街を爆破したい
このままじゃ生きられない
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
もっと笑えばよかった
ずっと戻りたかった
青春の全部に散れば咲け
散れば咲けよ百日紅
この日々を爆破して
心ごと爆破して
辛くてもいい 苦しさも全部僕のものだ
わかってるんだ
この星を爆破したい
君を消せるだけでいい
今しかない、いなくなれ
この日々を爆破して
心ごと爆破して
ずるいよ、優しさってやつちらつかせてさ
ずるいよ全部
この夜を爆破したい
君だけを覚えていたい
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
ヒッチコック・lyrics
「雨の匂いに懐かしくなるのは何でなんでしょうか。
夏が近づくと胸が騒めくのは何でなんでしょうか。
人に笑われたら涙が出るのは何でなんでしょうか。
それでもいつか報われるからと思えばいいんでしょうか。」
さよならって言葉でこんなに胸を裂いて
今もたった数瞬の夕焼けに足が止まっていた
「先生、人生相談です。
この先どうなら楽ですか。
そんなの誰もわかりはしないよなんて言われますか。
ほら、苦しさなんて欲しいわけない。
何もしないで生きていたい。
青空だけが見たいのは我儘ですか。」
「胸が痛んでも嘘がつけるのは何でなんでしょうか。
悪い人ばかりが得をしてるのは何でなんでしょうか。
幸せの文字が¥を含むのは何でなんでしょうか。
一つ線を抜けば辛さになるのはわざとなんでしょうか。」
青春って値札が背中に貼られていて
ヒッチコックみたいなサスペンスをどこか期待していた
「先生、どうでもいいんですよ。
生きてるだけで痛いんですよ。
ニーチェもフロイトもこの穴の埋め方は書かないんだ。
ただ夏の匂いに目を瞑って、
雲の高さを指で描こう。
想い出だけが見たいのは我儘ですか。」
「ドラマチックに人が死ぬストーリーって
売れるじゃないですか。
花の散り際にすら値が付くのも嫌になりました。
先生の夢は何だったんですか。
大人になると忘れちゃうものなんですか。」
「先生、人生相談です。
この先どうなら楽ですか。
涙が人を強くするなんて全部詭弁でした。
あぁ、この先どうでもいいわけなくて、
現実だけがちらついて、
夏が遠くて。
これでも本当にいいんですか。
このまま生きてもいいんですか。
そんなの君にしかわからないよなんて言われますか。
ただ夏の匂いに目を瞑りたい。
いつまでも風に吹かれたい。
青空だけが見たいのは我儘ですか。」
あなただけを知りたいのは我儘ですか
- 落下
準透明少年・lyrics
凛として花は咲いた後でさえも揺るがなくて
今日が来る不安感も奪い取って行く
正午過ぎの校庭で一人の僕は透明人間
誰かに気付いてほしくて歌っている
凛とした君は憧れなんて言葉じゃ
足りないようなそんな色が強く付いていて
どんな伝えたい言葉も
目に見えないなら透明なんだ
寂しさを埋めるように歌っていた
誰の声だと騒めきだした
人の声すらバックミュージックのようだ
あの日君が歌った歌を歌う
体の何処かで誰かが叫んでるんだ
長い夜の向こう側でこの心ごと渡したいから
僕を全部、全部、全部透過して
凛として君の心象はいつの日も透明だった
何の色も形も見えない
狂いそうだ 愛の歌も世界平和も
目に見えないなら透明なんだ
そんなものはないのと同じだ
駅前の喧騒の中を叫んだ
歌だけがきっとまだ僕を映す手段だ
あの日僕が忘れた夢を歌う
頭のどこかで本当はわかっていたんだ
長い夜の向こう側をこの僕の眼は映さないから
君を全部、全部、全部淘汰して
目が見えないんだ
想像だったんだ
君の色だとか 形だとか
目に見えぬ僕は謂わば準透明だ
今でもあの日を心が覚えているんだ
見えない君の歌だけで
体の何処かで言葉が叫んでるんだ
遠い夜の向こう側でこの心ごと渡したいから
僕を全部、全部、全部透過して
ただ君に晴れ・lyrics
夜に浮かんでいた
海月のような月が爆ぜた
バス停の背を覗けば
あの夏の君が頭にいる
だけ
鳥居 乾いた雲 夏の匂いが頬を撫でる
大人になるまでほら、背伸びしたままで
遊び疲れたらバス停裏で空でも見よう
じきに夏が暮れても
きっときっと覚えてるから
追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せないなら僕は一人だ
それでいいからもう諦めてる
だけ
夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする
写真なんて紙切れだ
思い出なんてただの塵だ
それがわからないから、口を噤んだまま
絶えず君のいこふ 記憶に夏野の石一つ
俯いたまま大人になって
追いつけない ただ君に晴れ
口に出せないまま坂を上った
僕らの影に夜が咲いていく
俯いたまま大人になった
君が思うまま手を叩け
陽の落ちる坂道を上って
僕らの影は
追いつけないまま大人になって
君のポケットに夜が咲く
口に出せなくても僕ら一つだ
それでいいだろ、もう
君の想い出を噛み締めてるだけ
冬眠・lyrics
雨の上がる校庭で昨日の花火を思い出した
あの時の君のぼうとした顔、
風にまだ夏の匂いがする
秋になって 冬になって
長い眠りについたあとに
雲に乗って 風に乗って
遠くに行こうよ ここじゃ報われないよ
花の揺れる校庭で昨日の夕陽を思い出した
あの時の透けて凜とした君
頬にまだ夏が残っている
春になって 夏を待って
深い眠りが覚めた頃に
水になって 花になって
空を見ようよ 言葉とかいらないよ
神様なんていないから
夢は叶うなんて嘘だから
仕事も学校も全部辞めにしよう
忘れることが自然なら
想い出なんて言葉作るなよ
忘れないよう口に蓋して
君を待って 夏が去って
いつか終わりが見えるころに
雲に乗って 風に乗って
眠るみたいに ただ
秋になって 冬になって
長い眠りについたあとに
雲に乗って 風に乗って
遠くに行こうよ
ここじゃ報われないよ
君とだけ生きたいよ
- 夏、バス停、君を待つ
だから僕は音楽を辞めた, 2019.4.10


- 8/31
藍二乗・lyrics
変わらない風景 浅い正午
高架下、藍二乗、寝転ぶまま
白紙の人生に拍手の音が一つ鳴っている
空っぽな自分を今日も歌っていた
変わらないように
君が主役のプロットを書くノートの中
止まったガス水道
世間もニュースも所詮他人事
この人生さえほら、インクみたいだ
あの頃ずっと頭に描いた夢も
大人になるほど時効になっていく
ただ、ただ雲を見上げても
視界は今日も流れるまま
遠く仰いだ夜に花泳ぐ
春と見紛うほどに
君をただ見失うように
転ばないように下を向いた
人生はどうにも妥協で出来てる
心も運命もラブソングも人生も信じない
所詮売れないなら全部が無駄だ
わざと零した夢で描いた今に寝そべったままで時効を待っている
ただ、ただ目蓋の裏側
遠く描く君を見たまま
ノート、薄い夜隅に花泳ぐ
僕の目にまた一つ
人生は妥協の連続なんだ
そんなこと疾うにわかってたんだ
エルマ、君なんだよ
君だけが僕の音楽なんだ
この詩はあと八十字
人生の価値は、終わり方だろうから
ただ、ただ君だけを描け
視界の藍も滲んだまま
遠く仰いだ空に花泳ぐ
この目覆う藍二乗
ただ、ただ
遠く仰いだ空、君が涼む
ただ夜を泳ぐように
八月、某、月明かり・lyrics
何もいらない
心臓が煩かった 歩くたび息が詰まった
初めてバイトを逃げ出した
音楽も生活も、もうどうでもよかった
ただ気に食わないものばかりが増えた
八月某、月明かり、自転車で飛んで
東伏見の高架橋、小平、富士見通りと商店街
夜風が鼻を擽ぐった
この胸の痛みは気のせいだ
わかってた わかった振りをした
最低だ 最低だ
僕の全部最低だ
君を形に残したかった
想い出になんてしてやるもんか
最低だ 最低だ
気持ちよくて仕方がないわ
最低だってこの歌詞自体が
人生、二十七で死ねるなら
ロックンロールは僕を救った
考えるのも辞めだ!どうせ死ぬんだから
君も、何もいらない
心臓が煩かった
笑うほど喉が渇いた
初めて心を売り出した
狭心もプライドも、もうどうでもよかった
気に食わない奴にも頭を下げた
八月某、あの頃の景色を跨いだ
ストックホルムの露天商、キルナ、
ガムラスタンは石畳
君だけを胸に仕舞った
この空の青さも気の所為だ
笑ってた、笑った顔のまま
最低だ 傲慢だ 君もみんな貪欲だ
ドラマチックな歌も愛もさぁ、
馬鹿らしくて仕方がないわ
知っていた 知っていた
君の人生、君のものだ
最低だっていくら叫ぼうが
そうだ、きっとそうだ
あの世ではロックンロールが流れてるんだ
賛美歌とか流行らない
神様がいないんだから
罪も過ちも犯罪も自殺も戦争もマイノリティも全部知らない
最低だ 最低だ 別れなんて傲慢だ
君の全てに頷きたいんだ
そんなの欺瞞と同じだ、エルマ
最低だ 最低だ 愛おしくて仕方がないわ
ドラマチックな夜で僕を悼みたい
最低だ 最低だ 言葉なんて冗長だ
君の人生は月明かりだ
有りがちだなんて言わせるものか
最低だ 最低だ 笑われたって仕方がないわ
最低なんて語呂だけの歌詞だ
人生、二十七で死ねるなら
ロックンロールは僕を救った
考えるのも辞めだ!どうせ死ぬんだから
今も、愛も、過去も、夢も、思い出も、鼻歌も、薄い目も、夜霞も、
優しさも、苦しさも、花房も、憂鬱も、あの夏も、この歌も、
偽善も、夜風も、嘘も、君も、僕も、青天井も、何もいらない
誌書きとコーヒー・lyrics
最低限の生活で小さな部屋の六畳で
君と暮らせれば良かった それだけ考えていた
幸せの色は準透明 なら見えない方が良かった
何も出来ないのに今日が終わる
最低限の生活で小さな部屋の六畳で
天井を眺める毎日 何かを考えていた
幸せの価値は60000円
家賃が引かれて4000円
ぼやけた頭で想い出を漁る
冷めた目で愛を語るようになっていた
冷めたコーヒーも相変わらずそうなんだ
嫌いだ
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
想い出になる 君が邪魔になっていく
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ
上手な歩き方も
さよならの言い方も
最小限の音量で 少し大きくなった部屋で
止まったガスも思い出も
シャワーの冷たさも書き殴った
寿命を売るなら残り二年
それだけ残してあの街へ
余った寿命で思い出を漁る
晴れも夜祭りも関町の街灯も
雲も逃げ水も斜に構えた歌詞観も
詭弁だ
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
想い出になる 君が詩に成っていく
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ、忘れられる方法も
これからの使い方も
冷めた目の中で君の詩を書いていた
僕のこの日々は君の為の人生だ
夢も儚さも君の口も目もその指先も忘れながら
ほら、そろそろ詩も終わる時間だ
やっと君の番だからさ
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
想い出になれ 君よ詩に成って往け
わかんないよ わかんないよ
わかんないよ わかんないよ
わかんないね
人は歩けるんだとか
それが当たり前だとかわかんないさ
わかんないよ
- 7/13
踊ろうぜ・lyrics
嗚呼、透明よりも澄み切った心で
世の中を笑っているんだよ
嗚呼、音楽なんかを選んだ
あの日の自分を馬鹿に思うね
伝えたい全部はもう
この詩も自分の声すらも
風になったから 泡と消えていったから
共感覚みたいこの感傷は何処かへ投げ捨てたい
僕でいいのなら 君が知りたいのなら
もう隠すことなんてないよ
今から少しだけ踊ろうぜ
嗚呼、人間なんて辞めたいな
そうだろ、面白くも何にもないだろ
嗚呼、自慢のギターを見せびらかした
あの日の自分を潰してやりたいよ
伝えたい全部はもう
夏も冬も明日の向こう側で
灰になったから 淡く消え去ったから
疾うに失くしてたこの情動も
何処かへ投げ捨てて
君がいいのなら ただ忘れたいのなら
もう躊躇うことなんてないよ
このまま夜明けまで踊ろうぜ
嗚呼、音楽なんか辞めてやるのさ
思い出の君が一つも違わず描けたら
どうせもうやりたいこと一つ言えないからさ
浮かばないからさ
君を知ったまま 日々が過ぎ去ったから
どうか追いつきたいこの情動を
このまま歌にしたい
今が苦しいならさ 言い訳はいいからさ
あぁもう、踊ろうぜほら
風になったのさ 泡と消えていったのさ
どうせ割り切れない
この感傷も何処かへ投げ捨てて
僕でいいのなら 君が知りたいのなら
もう隠すことなんてないよ
今から少しだけ
このまま少しだけ踊ろうぜ
六月は雨上がりの街を書く・lyrics
窓映る街の群青
雨樋を伝う五月雨
ぼうとしたまま見ている
雫一つ落ちる 落ちる
心の形は長方形
この紙の中だけに宿る
書き連ねた詩の表面
その上澄みにだけ君がいる
なんてくだらないよ
馬鹿馬鹿しいよ
理屈じゃないものが見たいんだよ
深い雨の匂い
きっと忘れるだけ損だから
口を動かして
指で擦って
言葉で縫い付けて
あの街で待ってて
雨音の踊る街灯
薄暮の先の曲がり角
一人、足音のパレード
夏を待つ雲の霞青
今の暮らしはi^2
君が引かれてる0の下
想い出の中でしか見えない
六月の雨上がりの中で
笑った顔だって書き殴って
胸を抉って
割り切れないのも知ってたんだろ
深い雨の匂いだって忘れるだけ損なのに
ただ僕の書いた手紙を読んだ
君のその顔が見たい
あの夏を書いてる
どうだっていい事ばかりだ
関わり合うのも億劫だ
言葉に出すのも面倒だ
結局君だけだったのか
だってくだらないよ
馬鹿馬鹿しいよ
理屈じゃないのも知ってたんだよ
深い雨の匂い
ずっと雨の街を書いている
心を動かして
胸を焦がして
このまま縫い付けて
あの街で待ってる
五月は花緑青の窓辺から・lyrics
夏が終わることもこの胸は
気のせいだって思っていた
空いた教室 風揺れるカーテン
君と空を見上げたあの夏が
いつまでだって頭上にいた
さようなら
青々と息を呑んだ 例う涙は花緑青だ
黙ったらもう消えんだよ
馬鹿みたいだよな
思い出せ!
思い出せない、と頭が叫んだ
ならばこの痛みが魂だ
それでも それでも聞こえないというなら
愛想笑いの他に何も出来ない
君と夏を二人過ごした想い出を
笑われたって黙っている
笑うなよ 僕らの価値は自明だ
例うならばこれは魂だ
黙っただけ辛いのに馬鹿みたいだろ
なぁ、言い返せ
言い返せないまま一人歩いた
指を指された僕が残った
それでも それでも思い出せないのか
さようなら
青々と息を呑んだ 例う涙は花緑青だ
黙ってくれ わかったよ
君の声がする
「思い出せ!」
思い出したんだ、と喉が叫んだ
この痛みが君の証明だ
それでも それでも聞こえないというなら
夜紛い・lyrics
等身大を歌うとかそんなのどうでもいいから
他人よりも楽に生きたい 努力はしたくない
俯いたまま歩くから空の青さがわからない
君の写真を見ていただけ
がらんどうの心が夕陽の街を歩いてく
銃身よりも重いと引き攣ったその嘘の分だけ
人生ごとマシンガン、消し飛ばしてもっと
心臓すら攫って ねぇ、さよなら一言で
悲しいことを消したい
嬉しいことも消したい
心を消したい
君に一つでいい、ただ穴を開けたい
名もない花が綺麗とかそんなのどうでもいいから
貧しい心を消したい バイトはしたくない
俯いたまま話すから人の気持ちがわからない
君の写真を見ていただけ
ライブハウスの中で等身大を歌ってる
金にもならないような歌なんか歌いやがってさ、馬鹿みたいだな
人生とはマシンガン そんなことを言いたい
リフレインごと歌って ねぇ、その喉から全て
切ない歌を消したい 優しい歌も消したい
聞くだけで痛い 僕に一つでいい
人生ごとマシンガン 消し飛ばしてもっと
苦しいんだと笑って ねぇ、さよなら一言で
君が後生抱えて生きていくような思い出になりたい 見るだけで痛いような
ただ一つでいい 君に一つでいい
風穴を開けたい
- 5/6
パレード・lyrics
身体の奥 喉の真下
心があるとするなら君はそこなんだろうから
ずっと前からわかっていたけど
歳取れば君の顔も忘れてしまうからさ
身体の奥 喉の中で 言葉が出来る瞬間を僕は知りたいから
このまま夜が明けたら
乾かないように想い出を
失くさないようにこの歌を
忘れないで もうちょっとだけでいい
一人ぼっちのパレードを
ずっと前から思ってたけど
君の指先の中にはたぶん神様が住んでいる
今日、昨日よりずっと前から、ずっとその昔の昔から。
わかるんだ
身体の奥 喉の真下
君の書く詩を ただ真似る日々を
忘れないように
君のいない今の温度を
乾かないような想い出で
失くせないでいたこの歌で
もう少しでいい もうちょっとだけでいい
一人ぼっちのパレードを
エルマ・lyrics
嘘つきなんて わかって 触れて
エルマ まだ まだ痛いよ
もうさよならだって歌って
暮れて夜が来るまで
朝日の差す木漏れ日 僕とエルマ
まだ まだ眠いかい
初夏の初め近づく五月の森
歩きだした顔には花の雫
ほら 涙みたいだ
このまま欠伸をしよう
なんならまた椅子にでも座ろう
許せないことなんてないんだよ
君は優しくなんてなれる
このまま何処かの遠い国で
浅い夏の隙間に寝そべったまま
涙も言葉も出ないままで
ただ夜の深さも知らないままで
嘘つきなんて わかって 触れて
エルマ まだ まだ痛いよ
もうさよならだって歌って
暮れて夜が来るまで
辛いことも苦しいことも何も見えないならわからないし
塞いだ目閉じたままで逃げた
月明かりの道を歩く
狭い部屋も冷たい夜も
眠い昼も 寂しい朝も
さよならの言葉越しに君の顔を見てる
このまま何処かの遠い国で
浅い夏の隙間に寝そべったまま
涙も言葉も出ないままで
ただ空の青さだけ見たままで
ただ君と終わりも知らないままで
嘘つきなんて わかって 触れて
エルマ まだ まだ痛いよ
もうさよならだって歌って
暮れて夜が来るまで
- 4/10
だから僕は音楽を辞めた・lyrics
考えたってわからないし
青空の下、君を待った
風が吹いた正午、昼下がりを抜け出す想像
ねぇ、これからどうなるんだろうね
進め方教わらないんだよ
君の目を見た 何も言えず僕は歩いた
考えたってわからないし
青春なんてつまらないし
辞めた筈のピアノ、机を弾く癖が抜けない
ねぇ、将来何してるだろうね
音楽はしてないといいね
困らないでよ
心の中に一つ線を引いても
どうしても消えなかった 今更なんだから
なぁ、もう思い出すな
間違ってるんだよ
わかってないよ、あんたら人間も
本当も愛も世界も苦しさも人生もどうでもいいよ
正しいかどうか知りたいのだって防衛本能だ
考えたんだ あんたのせいだ
考えたってわからないが、
本当に年老いたくないんだ
いつか死んだらって思うだけで
胸が空っぽになるんだ
将来何してるだろうって
大人になったらわかったよ
何もしてないさ
幸せな顔した人が憎いのは
どう割り切ったらいいんだ
満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感
間違ってないよ
なぁ、何だかんだあんたら人間だ
愛も救いも優しさも根拠が
ないなんて気味が悪いよ
ラブソングなんかが痛いのだって防衛本能だ
どうでもいいか あんたのせいだ
考えたってわからないし
生きてるだけでも苦しいし
音楽とか儲からないし
歌詞とか適当でもいいよ
どうでもいいんだ
間違ってないだろ
間違ってないよな
間違ってるんだよ わかってるんだ
あんたら人間も
本当も愛も救いも優しさも
人生もどうでもいいんだ
正しい答えが言えないのだって防衛本能だ
どうでもいいや あんたのせいだ
僕だって信念があった
今じゃ塵みたいな想いだ
何度でも君を書いた
売れることこそがどうでもよかったんだ
本当だ 本当なんだ 昔はそうだった
だから僕は音楽を辞めた
エルマ, 2019.8.28


- 車窓
憂一乗・lyrics
湖の底にいるみたいだ
呼吸の一つが喉に絡んだ
気泡を吐き出して数秒、やっと足が着いた
柔らかな泥の感触がした
ずっとずっとずっとずっとずっと
君を追っているだけで
どうしようもないことばかり言いたかった
睡蓮が浮いていた 水圧で透明だ
もう蜃気楼よりも確かならそれでいいよ
適当でもいいから 目的とかいいから
このまま何処でもいいからさ、逃げよう
湖の底にいるみたいだ
濡れる鼓膜がくすぐったいんだ
期待も将来も明日も何も聞きたくなかった
口から溢れる泡ぶくが綺麗で
ずっとずっとずっとずっとずっと
見惚れてしまっただけで
心より大事なものを見つけたかった
言葉って薄情だ 水圧で透明だ
なぁ、建前より綺麗なものを探してるんだ
そんなの忘れていいからもう、逃げよう
こんな自分ならいらない
僕には何にもいらない
お金も名声も愛も称賛も何にもいらない
このまま遠くに行きたい
思い出の外に触りたい
また君の歌が聴きたい
ずっとずっとずっとずっとずっと
君を追っているだけで
どうしようもないことだけ歌いたかった
睡蓮が浮いていた 水圧で透明だ
もう蜃気楼よりも確かならそれでいいよ
このまま何処でもいいからさ、
本当は全部置いてただ逃げ出したいだけだった
人生は透明だ 水圧で透明だ
もう蜃気楼よりも確かならそれでいいよ
適当でもいいから 目的とかいいから
このまま何処でもいいからさ、逃げよう
夕凪、某、花惑い・lyrics
夏になる前にこの胸に散る花火を書いた
夜が来るから明後日の方ばかりを見てる
口に出してもう一回
八月某日を思い出して
僕には言い足りないことばかりだ
ギターを鳴らして二小節
この歌の歌詞は380字
ロックンロールを書いた
あの夏ばっか歌っていた
さよならだけじゃ足りない
君に茜差す日々の歌を
思い出すだけじゃ足りないのさ
花泳ぐ 夏を待つ
君は言葉になる
忘れないようにあの夏に見た花火を書いた
想い出の僕ら、夜しか見えぬ幽霊みたいだ
何にも良いことないんだ
この世は僕には難解だった
君が教えなかったことばかりだ
ピアノを弾いてたホール
あのカフェももう無いんだ
僕らを貶す奴らを殺したい
君ならきっと笑ってくれる
このままじゃまだ足りない
僕ら花惑う風の中を
思い出すほどに苦しいのさ
夏が来る 夢を見る
心に穴が空く
唄歌うだけじゃ足りない
君に茜差す日々の歌を
美しい夜が知りたいのだ
花惑う 夏を待つ僕に差す月明かり
雨とカプチーノ・lyrics
灰色に白んだ言葉は
カプチーノみたいな色してる
言い訳はいいよ 窓辺に置いてきて
数え切れないよ
灰色に白んだ心は
カプチーノみたいな色してる
言い訳はいいよ 呷ろうカプチーノ
戯けた振りして
さぁ揺蕩うように雨流れ
僕らに嵐す花に溺れ
君が褪せないような思い出を
どうか、どうか、どうか君が溢れないように
波待つ海岸 紅夕差す日
窓に反射して
八月のヴィスビー 潮騒
待ちぼうけ 海風一つで
夏泳いだ花の白さ、宵の雨
流る夜に溺れ
誰も褪せないような花一つ
どうか、どうか、どうか胸の内側に挿して
ずっとおかしいんだ
生き方一つ教えてほしいだけ
払えるものなんて僕にはもうないけど
何も答えられないなら言葉一つでもいいよ
わからないよ
本当にわかんないんだよ
さぁ揺蕩うように雨流れ
僕らに嵐す花に溺れ
君が褪せないように書く詩を
どうか、どうか、どうか今も忘れないように
また一つ夏が終わって、花一つを胸に抱いて、
流る目蓋の裏で
君が褪せないようにこの詩を
どうか、どうか君が溢れないように
- 湖の街
神様のダンス・lyrics
忘れるなんて酷いだろ
幸せになんてなるものか
色のない何かが咲いた
君のいない夏に咲いた
人に笑われたくないから
怯えるように下を向く
心より大事な何かが
あってたまるものか
暮れない夕に茜追い付いて
君を染め抜いた
見えないように僕を追い越して
行かないで
僕たち神様なんて知らん顔
何処までだって行ける
なぁ、心まで醜い僕らだ
世界は僕らのものだ
音楽だけでいいんだろ
他人に合わせて歩くなよ
教えてくれたのはあんたじゃないか
どうだっていいよ、このまま遠くへ
誰も知らない場所で月明かりを探すのだ
名もない花が綺麗とか
どうでもいいことばっかだ
君の口癖が感染ってる
喉の真下には君がいる
言葉も生活も愛想も
全て捨ててこそ音楽だ
その価値も知らないあんたに
わかって堪るものか
暮れない夕に茜追いついて
僕を染め抜いた
いつか時間が全て追い抜いて
消えないで
僕たち神様なんて知らん顔
世界の全部が欲しい
なぁ心まで醜いあんたの、想い出全部をくれよ
価値観だって自由なら
人を傷付けていいだろ
教えなかったのはあんたじゃないか
どうだっていいよ、このまま遠くへ
誰も見てない場所で生きる真似をしてるのさ
酷い顔で踊るのさ
胸も痛いままで
神様僕たちなんて知らん顔
何処までだって行ける
なぁ、言葉が世界だと云うなら、世界は僕らのものだ
忘れるなんて酷いだろ
幸せになんてなれるかよ
僕を歪めたのはあんたじゃないか
そうだった、僕はこのまま遠くへ
誰も知らない場所で月明かりを探すのだ
雨晴るる・lyrics
やっと雨が降ったんだ
この青をずっと思っていたんだ
心臓の音が澄んでいた
言葉以外何にもいらない空だ
あの日まで僕は眠っていたんだ
言い訳ばかりで足が出なかった
想像よりずっと、君がいた街の青さを
ずっと
歌え 人生は君だ
ずっと君だ 全部君だ
藍の色だ
言葉になろうと残った思い出だけが
遠い群青を染めた
もっと書きたい ずっと冷めない愛の歌を
君のいない夏がまた来る
やっと雨が上がったんだ
この街をきっと君が描いたんだ
心臓の音が澄んでいた
あの日からずっと君が待っている
何も言わない僕が笑っている、誤魔化すように
消えろ 全部消えろ
声も言葉も愛の歌も
この目を覆った淡い群青の中で
白いカーテンが揺れる
もっと触れたい ずっと触れたい愛の歌を
君のいない夏の青さを
白いカーテンが揺れた
そっと揺れた 僕に揺れた
愛に触れた
言葉になろうと残っていた君の詩は
あの憧憬は消えない きっと消せない
ずっと褪せない無謬の色だ
歌え 人生は君だ
全部君だ ずっと消えない愛の色だ
この目を覆った淡い群青の色だ
思い出すように揺れた
もっと書きたい ずっと冷めない愛の歌を
君のいない夏がまた来る
歩く・lyrics
今日、死んでいくような
そんな感覚があった
ただ明日を待って
流る季節を見下ろした
どうせならって思うよ
もう随分遠くに来た
何も知らない振りは終わりにしよう
確かめるように石畳を歩いた
俯きながら行く 何も見えないように
君の旅した街を歩く
訳もないのに口を出てく
昨日まで僕は眠ってた
何も知らずにただ生きていたんだ
それだけなんだ
今日、生きてるような
そんな錯覚があった
妄想でもいいんだ
君が居てくれたらいいや
悲しいような歌ばかり書く
頬を伝え花緑青
本当は全部を知っているんだ
夏の終わりだった 流れる雲を読んで
顔上げながら行く街は想い出の中
君の言葉を食べて動く
僕の口には何が見える
今でもこの眼は眠ってる
何も見えずにただ君を見てる
彷徨うように
あの丘の前に君がいる
その向こうには何が見える
言葉ばかりが口を伝う
何も知らないまま生きていたんだ
それだけなんだ
今でも、エイミー
心に穴が空いた・lyrics
小さな穴が空いた
この胸の中心に一つ
夕陽の街を塗った
夜紛いの夕暮れ
忘れたいのだ
忘れたいのだ
忘れたい脳裏を埋め切った青空に
君を描き出すだけ
だから心に穴が空いた
埋めるように鼓動が鳴った
君への言葉も
口を開けば大体言い訳だった
だから心に穴が空いた
降る雨だけ温いと思った
繕って 繕って 繕って
顔のない自分だけ
少しずつ穴の開いた木漏れ日の、
森で眠るように 深海みたいに深く
もっと微睡むように深く、深く、深く
深く夜を纏った目の奥に月明かりを見るまで
君の心に穴を開けた
音楽が何だって言うんだ
ただ口を開け
黙ったままなんて一生報われないよ
忘れたいことが多くなって
諦めばかり口に出して
躓いて、躓いて、転がって、土の冷たさだけ
君の人生になりたい僕の、人生を書きたい
君の残した詩のせいだ
全部音楽のせいだ
君の口調を真似した
君の生き方を模した
何も残らないほどに
僕を消し飛ばすほどに残ってる
心の穴の奥に棲んだ
君の言葉に縋り付いた
でも違うんだよ、もう
さよならだなんて一生聞きたくないよ
忘れたいことが多くなって
これから僕だけ年老いて
冷め切って、冷め切って
僕の心に穴が開いた
君の言葉で穴が開いた
今ならわかるよ
「君だけが僕の音楽」なんだよ、エイミー
だから心に穴が空いた
その向こう側に君が棲んだ
広がって 広がって 広がって
戻らない穴だけ
穴の空いた僕だけ
- 森の教会
声・lyrics
どうしたって触れない
どうやっても姿を見せない
簡単に忘れるくせに
もうちょっとだけ覚えていたい
この歌の在り処を
わからないから言葉のずっと向こうで
この喉を通るさよなら呑み込んで
笑っている
朝焼け空、唇痛いほど噛んで
虚しさは全部今日のものだ
わかっているけれど
わかっているけれど
話すとき顔を出す
出てきたってすぐに消えてく
泣くときに溢れる
黙ったって喉の奥にいる、神様の話
描きたいのは心に空いた時間だ
言葉よりずっと重い人生はマシンガン
さよならの形をただ埋められないと零して
僕らは昨日も今日もここで座っているばかり
笑っているばかり
わからないから言葉のずっと向こうで
この喉を通るさよなら呑み込んで
眠っている
朝焼け空、唇痛いほど噛んだ
貴方の世界を今日も知らない
私がいるばかり
笑っているばかり
エイミー・lyrics
口に出してもう一回
ギターを鳴らして二拍
歌詞を書いてもう三節
四度目の夏が来る
誤解ばっかさ、手遅れみたいな話が一つ
頭の六畳間、君と暮らす僕がいる
忘れたいこと、わからないことも僕らのものだ
長い夜の終わりを信じながら
さぁ人生全部が馬鹿みたいなのに
流れる白い雲でもう
想像力が君をなぞっている
あの夏にずっと君がいる
生き急いで数十年
許せないことばかり
歌詞に書いた人生観すら
ただの文字になる
言葉だって消耗品思い出は底がある
何かに待ち惚け、百日紅の花が咲く
このまま、ほら
このまま、何処か遠くの国で
浅い夏の隙間を彷徨いながら
さぁ人生全部で君を書いたのに、
忘れぬ口癖のよう
想像力が紙をなぞっている
指先にずっと君がいる
もういいよ
さぁもういいかい、この歌で最後だから
何も言わないままでも
人生なんて終わるものなのさ
いいから歌え、もう
さぁ人生全部が馬鹿みたいなのに
流れる白い雲でもう
想像力が僕をなぞっている
あの夏にずっと君がいる
- 海底、月明かり
ノーチラス・lyrics
時計が鳴ったからやっと眼を覚ました
昨日の風邪がちょっと嘘みたいだ
出かけようにも、あぁ、予報が雨模様だ
どうせ出ないのは夜が明けないから
喉が渇くとか、心が痛いとか、
人間の全部が邪魔してるんだよ
さよならの速さで顔を上げて
いつかやっと夜が明けたら
もう目を覚まして。見て。
寝ぼけまなこの君を何度だって描いているから
傘を出してやっと外に出てみようと
決めたはいいけど、靴を捨てたんだっけ
裸足のままなんて度胸もある訳がないや
どうでもいいかな
何がしたいんだろう
夕飯はどうしよう
晴れたら外に出よう
人間なんてさ見たくもないけど
このままの速さで今日を泳いで
君にやっと手が触れたら
もう目を覚まして。見て。
寝ぼけまなこの君を忘れたって覚えているから
丘の前には君がいて随分久しいねって、
笑いながら顔を寄せて
さぁ、二人で行こうって言うんだ
ラップランドの納屋の下
ガムラスタンの古通り
夏草が邪魔をする
このままの速さで今日を泳いで
君にやっと手が触れたら
もう目を覚まして。見て。
君を忘れた僕を
さよならの速さで顔を上げて
いつかやっと夜が明けたら
もう目を覚まして。見て。
寝ぼけまなこの君を何度だって描いているから
盗作, 2020.7.29


- 音楽泥棒の自白
昼鳶・lyrics
器量、才覚、価値観
骨の髄まで全部妬ましい
心全部満たしたい
嫉む脳裏は舌打ちばかり
誇大広告勝り、世は死に体の音楽ばかり
君の全部妬ましい
浅ましいこの心根が疼くばかり
つまらないものだけが観たいのさ
夜の全部が僕は欲しい
ただやるせないから歌にしたい
この渇きを言い訳にさぁ
夜景、ダイヤの光、笑みで住宅街を見下し
素晴らしきその暮らし
さぁ幸せはお幾らばかり?
この妬みは疎ましいばかり
つまらないものだけが観たいのさ
他人の全部を馬鹿にして
忘れたいのに胸が痛い
ただ何も無いから僕は欲しい
つまらないものだけが観たいのさ
君の全部が僕は欲しい
ただ何も無いから僕は欲しい
この渇きを言い訳にさぁ
春ひさぎ・lyrics
大丈夫だよ大丈夫
寝てれば何とかなるし
どうしたんだいそんな顔してさぁ
別にどうともないよ
駅前で愛を待ち惚け
他にすることもないし
不誠実の価値も教えてほしいわ
言勿れ 愛など忘れておくんなまし
苦しい事だって何でも教えておくれ
左様な蜻蛉の一つが善いなら忘れた方が増し
詮の無いことばかり聞いてられないわ
言いたくないわ
大丈夫どれだけも吐いても
言葉は言い足りないし
どうしたんだいあんたにわかるかい
この憂いが
玄関で愛を待ち惚け
囁く声で喘いで
後悔の悔を教えてほしいわ
陽炎や 今日などどうか忘れておくんなまし
悲しい事無しの愛だけ歌っておくれ
終いは口付け一つが善いのも言わない方が増し
詮の無いことでも忘れられないわ
知りたくないわ
陽炎や 今日などいつか忘れてしまうのでしょう?苦しいの
左様な躊躇いの一つが愛なら知らない方が増し
詮の無いことだって聞かせてもっと
言勿れ 明日など忘れておくんなまし
苦しい事だって何度も教えておくれ
無粋な蜻蛉の一つでいいから、溺れるほどに欲しい
詮の無いことだって聞かせてもっと
愛して欲しいわ
爆弾魔・lyrics
死んだ眼で爆弾片手に口を開く
さよならだ人類、みんな吹き飛んじまえ
泣いた顔で爆弾片手 夜が苦しい
安っぽいナイトショーのワンシーンみたいな夢が見たい
今日も出来ませんでした
今日もやれませんでした
青春の全部を爆破したい
君のことを歌にしたい
この日々を爆破して
心ごと爆破して
ずるいよ、優しさってやつちらつかせてさ ずるいよ全部
この部屋を爆破したい
夢がなきゃ生きられない
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
死んだ眼で爆弾片手に街を歩く
誰も見向きもしないんだ 爆弾を翳したとて
ずっと泣けませんでした
ずっと笑えませんでした
青春の全部に君がいる
風が吹けば花が咲く
あの夏を爆破して
思い出を爆破して
酷いよ、君自身は黙って消えたくせに 酷いよ全部
この街を爆破したい
このままじゃ生きられない
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
もっと笑えばよかった
ずっと戻りたかった
青春の全部に散れば咲け
散れば咲けよ百日紅
この日々を爆破して
心ごと爆破して
辛くてもいい 苦しさも全部僕のものだ わかってるんだ
この星を爆破したい
君を消せるだけでいい
今しかない、いなくなれ
この日々を爆破して
心ごと爆破して
ずるいよ、優しさってやつちらつかせてさ ずるいよ全部
この夜を爆破したい
君だけを覚えていたい
だから今、さよならだ
吹き飛んじまえ
- 青年期、空き巣
レプリカント・lyrics
君は映画をずっと観ている
誰一人もいない劇場で
今思えばチープなセットで人のよく死ぬSF映画
いつか世界が真面になって、人の寿命さえ随分伸びて、死ねない世界になればいいのにね
そしたら心以外は偽物だ
言葉以外は偽物だ
神様だって作品なんだから
僕ら皆レプリカだ
いつか季節が過ぎ去って
冷たくなって年老いて
その時に
僕は映画をずっと観ている
つまらないほどに薄い映画
席を立ってからやっと気付く
これは僕を描いたドラマだ
いつか僕らは大人になって、
手に入れるものも大きくなった
次は愛でも買えればいいのにね
あんたの価値観なんて偽物だ
思い出だって偽物だ
心は脳の信号なんだから
愛も皆レプリカだ
いつか季節が過ぎ去って
思い出ばかりが募って
その時に
満たされるならそれで良かった
歌を歌うのに理由も無いわ
他人の為に生きられない
さよなら以外全部塵
人を呪う歌が描きたい
それで誰かを殺せればいいぜ
夏の匂いに胸が詰まっていた
僕らの心以外は偽物だ
言葉以外は偽物だ
この世の全部は主観なんだから
君も皆レプリカだ
さよならだって投げ出して
このまま遠く逃げ出して
言葉で全部表して
心も愛も書き足して
それでも空は酷く青いんだから
それはきっと魔法だから
いつか季節が過ぎ去って
冷たくなって年老いて
その時にやっとわかる
僕もその青さがわかる
花人局・lyrics
さよならを置いて僕に花もたせ
覚束ぬままに夜が明けて
誰もいない部屋で起きた
その温もり一つ残して
昨日の夜のことは少しも覚えてないけれど
他に誰かが居た、そんな気がただしている
二日酔いが残る頭は回っちゃいないけれど
わからないままでもまぁ、それはそれでも綺麗だ
洗面台の歯ブラシ、誰かのコップ、棚の化粧水、覚えのない物ばかりだ
枕は花の匂いがする
さよならを置いて僕に花もたせ
覚束ぬままに夜が明けて
誰もいない部屋で起きる
その温もり一つ残して
昨日の夜のことはそこまで覚えてないけれど
美人局を疑う、そんな気もしないでいる
二日酔いも醒めた頭で考えていたけど、わからないままでもいい
むしろその方がいい
窓際咲くラベンダー、汚れたシンク、編み掛けのマフラー、覚えのない事ばかりだ
部屋には春の匂いがする
浮雲掴むような花人局
誰も来ないまま日が暮れて
夕陽の差した窓一つ
何も知らない僕を残して
昨日の夜のことも本当は少し憶えてるんだ
貴方の居ない暮らし、それが続くことも
今でもこの頭一つで考えているばかり
花一つ持たせて消えた貴方のこと
明日にはきっと戻ってくる
何気ない顔で帰ってくる
今にドアが開いて聞こえる
ごめんね、遅くなったって
言葉だけをずっと待っている
夕焼けをじっと待っている
忘れてしまう前に花描け
今日も一人また夜が来て
誰もいない部屋で眠る
その温もり、僕に残して
馬鹿みたいに愛は花もたせ
この部屋にもまた春が来て
貴方のいない街を生きる
その温もり、僕に残して
僕にひとつ、花を残して
言葉だけをずっと待っている
夕焼けをじっと待っている
- 朱夏期、音楽泥棒
盗作・lyrics
「音楽の切っ掛けは何だっけ。
父の持つレコードだったかな。
音を聞くことは気持ちが良い。
聞くだけなら努力もいらない。
前置きはいいから話そう。
ある時、思い付いたんだ。
この歌が僕の物になれば、この穴は埋まるだろうか。
だから、僕は盗んだ」
嗚呼、まだ足りない。全部足りない。
何一つも満たされない。
このまま一人じゃあ僕は生きられない。
もっと知りたい。愛を知りたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。
「ある時に、街を流れる歌が僕の曲だってことに気が付いた。
売れたなんて当たり前さ。
名作を盗んだものだからさぁ!
彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。
褒めちぎる奴等は皆馬鹿だ。
群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。
まぁ、それは僕も同じか」
嗚呼、何かが足りない。
これだけ盗んだのに少しも満たされない。
上面の言葉一つじゃ満たされない。
愛が知りたい。金が足りない。
この妬みを満たすくらい美しいものを知りたい。
「音楽の切っ掛けが何なのか、今じゃもう忘れちまったが欲じゃないことは覚えてる。
何か綺麗なものだったな。
化けの皮なんていつか剥がれる。
見向きもされない夜が来る。
その時に見られる景色が心底楽しみで。
そうだ。
何一つもなくなって、地位も愛も全部なくなって。
何もかも失った後に見える夜は本当に綺麗だろうから、本当に、本当に綺麗だろうから、
僕は盗んだ」
嗚呼、まだ足りない。もっと書きたい。
こんな詩じゃ満たされない。
君らの罵倒じゃあ僕は満たされない。
まだ知らない愛を書きたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。まだ足りない。
まだ足りない。僕は足りない。
ずっと足りないものがわからない。
まだ足りない。もっと知りたい。
この身体を溶かすくらい美しい夜を知りたい。
思想犯・lyrics
他人に優しいあんたにこの心がわかるものか
人を呪うのが心地良い、だから詩を書いていた
朝の報道ニュースにいつか載ることが夢だった
その為に包丁を研いでる
硝子を叩きつける音、何かの紙を破くこと、さよならの後の夕陽が美しいって、君だってわかるだろ
烏の歌に茜
この孤独も今音に変わる
面影に差した日暮れ
爪先立つ、雲が焼ける、さよならが口を滑る
認められたい、愛したい
これが夢ってやつか
何もしなくても叶えよ、早く、僕を満たしてくれ
他人に優しい世間にこの妬みがわかるものか
いつも誰かを殴れる機会を探してる
ビール瓶で殴る街路灯、投げるギターの折れる音、戻らない後悔の全部が美しいって、そういうのさぁ、僕だってわかるのに
言葉の雨に打たれ
秋惜しむまま冬に落ちる
春の山のうしろからまた一つ煙が立つ
夏風が頬を滑る
他人に優しいあんたにこの孤独がわかるものか
死にたくないが生きられない、だから詩を書いている
罵倒も失望も嫌悪も僕への興味だと思うから
他人を傷付ける詩を書いてる
こんな中身のない詩を書いてる
君の言葉が呑みたい
入れ物もない両手で受けて
いつしか喉が潤う
その時を待ちながら
烏の歌に茜
この孤独よ今詩に変われ
さよなら、君に茜
僕は今、夜を待つ
また明日。口が滑る
逃亡・lyrics
夏の匂いがしてた
あぜ道、ひとつ入道雲
夜が近づくまで今日は歩いてみようよ
隣の町の夜祭りに行くんだ
温い夜、誘蛾灯の日暮、鼻歌、軒先の風鈴、
坂道を下りた向こう側、祭り屋台の憧憬
夜が近付くまで今日は歩いてみようよ
上を向いて歩いた、花が夜空に咲いてる
夏の匂いがしてた
あぜ道のずっと向こうへ
誰一人人の居ない街を探すんだ
ねぇ、こんな生活はごめんだ
さようなら、手を振る影一つ、夜待ち、鼻先のバス停
思い出の中の風景はつまらぬほど綺麗で
夜が近付くまで今日も歩いていたんだ
目蓋を閉じれば見える、夏の匂いがする
さぁ、もっと遠く行こうよ
さぁ、もっと逃げて行こうぜ
さぁ、僕らつまらないことは全部放っといて
道の向こうへ
夏の匂いがしてた
あぜ道、ひとつ入道雲
誰一人人の居ない街で気付くんだ
君も居ないことにやっと
温い夜、誘蛾灯の日暮、鼻歌、軒先の風鈴、
坂道を下りた向こう側、祭り屋台の憧憬
大人になってもずっと憶えてるから
ねぇ遠くへ行こうよ、あの丘の向こうへ
さぁ、もっと遠く行こうよ
さぁ、もっと逃げて行こうぜ
さぁ、僕らつまらないことは全部放っといて
道の向こうへ
- 幼年期、思い出の中
夜行・lyrics
ねぇ、このまま夜が来たら、僕らどうなるんだろうね
列車にでも乗って行くかい 僕は何処でもいいかな
君はまだわからないだろうけど、空も言葉で出来てるんだ
そっか、隣町なら着いて行くよ
はらはら、はらはら、はらり
晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
他には何にもいらないから
波立つ夏原、涙尽きぬまま泣くや日暮は夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
そうなんだね
ねぇ、いつか大人になったら、僕らどう成るんだろうね
何かしたいことはあるのかい 僕はそれが見たいかな
君は忘れてしまうだろうけど思い出だけが本当なんだ
そっか、道の先なら着いて行くよ
さらさら、さらさら
さらさら、さらさら
花風、揺られや一輪草
言葉は何にもいらないから
君立つ夏原、髪は靡くまま、泣くや雨催い夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
そうなんだね
そっか、大人になったんだね
はらはら、はらはら、はらり
晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
他には何にもいらないから
波立つ夏原、涙尽きぬまま泣くや日暮は夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
僕はここに残るんだね
ずっと向こうへ往くんだね
そうなんだね
花に亡霊・lyrics
もう忘れてしまったかな
夏の木陰に座ったまま、氷菓を口に放り込んで風を待っていた
もう忘れてしまったかな 世の中の全部嘘だらけ
本当の価値を二人で探しに行こうと笑ったこと
忘れないように 色褪せないように
形に残るものが全てじゃないように
言葉をもっと教えて 夏が来るって教えて
僕は描いてる 眼に映ったのは夏の亡霊だ
風にスカートが揺れて 想い出なんて忘れて
浅い呼吸をする、汗を拭って夏めく
もう忘れてしまったかな
夏の木陰に座った頃、遠くの丘から顔出した雲があったじゃないか
君はそれを掴もうとして、馬鹿みたいに空を切った手で
僕は紙に雲一つを描いて、笑って握って見せて
忘れないように 色褪せないように
歴史に残るものが全てじゃないから
今だけ顔も失くして
言葉も全部忘れて
君は笑ってる
夏を待っている僕ら亡霊だ
心をもっと教えて
夏の匂いを教えて
浅い呼吸をする
忘れないように 色褪せないように
心に響くものが全てじゃないから
言葉をもっと教えて
さよならだって教えて
今も見るんだよ
夏に咲いてる花に亡霊を
言葉じゃなくて時間を
時間じゃなくて心を
浅い呼吸をする、汗を拭って夏めく
夏の匂いがする
もう忘れてしまったかな
夏の木陰に座ったまま、氷菓を口に放り込んで風を待っていた
創作, 2021.1.27


強盗と花束・lyrics
ある朝、僕は気付いたんですが
思ったよりもソファが狭い
お金が足りないわけでもないけど
家具屋は生活圏外
そうして僕は思ったんですが
隣の家なら徒歩一分
何とかなると思った
僕は包丁を持った
何にも満たされないなら
行こう、僕らで全部奪うのさ
紙みたいな理性なんてほら、飛ばしてしまえ
神様、本当にこの世の全部が人に優しいんだったら
少しくらいは僕らにくれたっていいじゃないですか
ある昼、僕は思ったんですが
死にゆく貴方に花を上げたい
お金が足りないどころか無いから
花束は予算圏外
そうして僕は気付いたんですが
隣の花屋は定休日
盗めばいいと思った
僕は信号を待った
笑え、真面目な顔で澄ましてる
実はあんたもまともじゃないのさ
金にならない常識なんてもう、忘れてしまえ
他人の痛みが他人にわかるかよ
百年経てば誰でも骨だ
今日くらいは僕らも間違っていいじゃないですか
ある夜、僕はわかったんですが
これから先には夢が無い
貴方が居なくなるなんて
考えたこともなかった
花屋の主人は優しかった
けど盗んだことすら咎めない
強盗と花束に何かの違いがあるのですか
それ、何かが違うのですか
何にも満たされないなら
行こう、僕らで全部奪うのさ
塵みたいな理性なんてほら、飛ばしてしまえ
神様、本当にこの世の全部が人に優しいんだったら
少しくらいは僕らにくれたっていいじゃないですか
少しくらいは僕らを裁いたっていいじゃないですか
ある朝、僕は気付いたんですが
思ったよりも世界は広い
努力が足りないわけでもないのに
何にも実らず圏外
仕事を辞めて思ったんですが
安心なんて何処にも無い
終わった方が未だ増し
ソファが小さく見えた
春泥棒・lyrics
高架橋を抜けたら雲の隙間に青が覗いた
最近どうも暑いからただ風が吹くのを待ってた
木陰に座る
何か頬に付く
見上げれば頭上に咲いて散る
はらり、僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
さぁ、今日さえ明日過去に変わる
ただ風を待つ
だから僕らもう声も忘れて
さよならさえ億劫
ただ花が降るだけ晴れり
今、春吹雪
次の日も待ち合わせ
花見の客も少なくなった
春の匂いはもう止む
今年も夏が来るのか
高架橋を抜けたら道の先に君が覗いた
残りはどれだけかな
どれだけ春に会えるだろう
川沿いの丘、木陰に座る
また昨日と変わらず今日も咲く花に、
僕らもう息も忘れて
瞬きさえ億劫
花散らせ今吹くこの嵐は
まさに春泥棒
風に今日ももう時が流れて
立つことさえ億劫
花の隙間に空、散れり
まだ、春吹雪
今日も会いに行く
木陰に座る
溜息を吐く
花ももう終わる
明日も会いに行く
春がもう終わる
名残るように時間が散っていく
愛を歌えば言葉足らず
踏む韻さえ億劫
花開いた今を言葉如きが語れるものか
はらり、僕らもう声も忘れて
瞬きさえ億劫
花見は僕らだけ
散るなまだ、春吹雪
あともう少しだけ
もう数えられるだけ
あと花二つだけ
もう花一つだけ
ただ葉が残るだけ、はらり
今、春仕舞い
- 創作
風を食む・lyrics
明日はきっと天気で 悪いことなんてないね
タイムカードを押して僕は朝、目を開いた
僕らは今日も買ってる 足りないものしかなくて
靴を履きながら空想 空は高いのかな
貴方さえ 貴方さえ
これはきっとわからないんだ
はにかむ顔が散らつく
口を開けて風を食む
春が先 花ぐわし
桜の散りぬるを眺む
今、風を食む
棚の心は十五円 一つだけ売れ残った
値引きのシールを貼って閉店時間を待った
明日もきっと天気で 此処にも客が並んで
二割引の心は誰かが買うんだろうか
貴方だけ 貴方だけ
僕はずっと想ってたんだ
ただ白いあの雲を待つ
風のない春に騒めく
草流れ 天飛ぶや
軽く花の散るを眺む
今、風を食む
遂に心は半額 いつまでも売れ残って
テレビを眺めて空想 ニュースは希望のバーゲン
貴方は今日も買ってる 足りないものしかなくて
俯く手元で購入 空は高いのかな
貴方だけ 貴方だけ
この希望をわからないんだ
売れ残りの心でいい
僕にとっては美しい
春が咲き 花ぐわし
桜の散りぬるを眺む
貴方しか 貴方しか
貴方の傷はわからないんだ
口を開けて歌い出す
今、貴方は風を食む
冬籠り 春が先
貴方の歌だけが聞こえる
今、口遊む貴方だけ
貴方だけ
嘘月・lyrics
雨が降った 花が散った
ただ染まった頬を想った
僕はずっとバケツ一杯の月光を呑んでる
本当なんだ 夜みたいで
薄く透明な口触りで
そうなんだ、って笑ってもいいけど
僕は君を待っている
夏が去った街は静か
僕はやっと部屋に戻って
夜になった
こんな良い月を一人で見てる
本当なんだ、昔の僕は涙が宝石で出来てたんだ
そうなんだ、って笑ってもいいけど
声はもうとっくに忘れた
想い出も愛も死んだ
風のない海辺を歩いたあの夏へ
僕はさよならが欲しいんだ
ただ微睡むような
物一つさえ云わないまま
僕は君を待っている
歳を取った 一つ取った
何も無い部屋で春になった
僕は愛を、底が抜けた柄杓で呑んでる
本当なんだ 味もしなくて
飲めば飲むほど喉が乾いて
そうなんだ、って笑ってもいいけど
僕は夜を待っている
君の鼻歌が欲しいんだ
ただ微睡むような
物一つさえ云わないまま
僕は君を待っている
君の目を覚えていない
君の口を描いていない
物一つさえ云わないまま
僕は君を待っていない
君の鼻を知っていない
君の頬を想っていない
さよならすら云わないまま
君は夜になって行く
幻燈, 2023.4.5
第1章:夏の肖像
1. 夏の肖像
種田山頭火「草木塔」より三句引用
「うしろすがたのしぐれてゆくか」
「草のそよげば何となく人を待つ」
「あなたを待つてゐる火のよう燃える」
夏の中に消えていく女性。やがて絵画の中の緑に溶ける。
lyrics
だからもっと踊るように
ほろりほろり落ちるように
さよならは花咲くように
それは夏の木漏れ日のよう
寂しい雨上がり、花を見つけて
ぽっかり空いたような貴方の心
少しだけ歩こうか 風の吹く間に
草のそよげば何となく誰かを待つ
忘れるたびに増やすことが悲しいのでしょう
だからもっと踊るように
ほろりほろり落ちるように
さよならは花咲くように
それは それは
だからもっと踊るように
あぁ僕らずっと一つじゃないの
涙拭けば雨のように
それは夏の木漏れ日のよう
木漏れ日のよう
貴方の中には何があるのかい
僕の心には何を描くのかい
少しだけ歩こうか 雨の降る間に
その後ろ姿もしぐれてゆくか
忘れることが苦しい、それも正しいのでしょう
言葉もっと遊ぶように
ほろりほろり落ちる夕陽
五月雨が花火のように
それは それは
去ればぱっと晴れる陽気
あなたを待っている、火のように
燃える雲、茜のように
それは風のお祭りのよう
あの日の空を思う胸が苦しいのでしょう
だからもっと踊るように
ほろりほろり落ちるように
さよならは花咲くように
それは それは
だからもっと踊るように
あぁ僕らずっと一つじゃないの
涙吹けば雨模様に
それは夏の木漏れ日のよう
木漏れ日のよう
2. 都落ち
万葉集第2巻116番 但馬皇女
「人言を 繁み言痛み 己が世に 未だ渡らぬ 朝川渡る」
貴方の頭を都として、そこからいなくなること、忘れられていくこと。都落ち。
美しい庭園から草舟が出ていく。都から逃れる平家のように舟は去っていく。
lyrics
花咲くや 赤ら引く頬に
さざなみ寄るは海
貴方は水際一人微笑むだけ
今、思い出に僕は都落ち
鼻歌、綺麗だね
明日には往くんだぜ
海猫が鳴いたね
鳥でも泣くんだね
心なし乾いたら別れの時間だぜ
夏風揉まれて貴方に浅い影
さらり花咲くや あから引く頬に
さざなみ、夜は海
貴方は水際一人手を振るだけ
今、思い出に僕は都落ち
朝焼け、綺麗だね
舟はもう発つんだぜ
海猫が鳴いたね
貴方も泣くんだね
人里離れて鳴る音は向かい波
飛ぶ鳥は遠くへ明日から向こうまで
水に落ち流れやがて憂き
貴方に焦がれる舟は海
惜しみ書く指は思う丈ばかり
散る思い出は波か都落ち
都離れて舟進む
水は流れて時もまた
僕は貴方の思い出に
ただの記憶に
恋ふらくはあから引く頬の
寄せ消ゆ波の花
貴方は水際一人微笑むだけ
今、思い出に僕は
さらり花咲くや あから引く頬に
さざなみ、夜は海
貴方は水際一人手を振るだけ
今、左様なら 僕は都落ち
3. ブレーメン
グリム童話「ブレーメンの音楽師」
現代を生きる人々の行進。実際、死ぬほどのことはこの世には無い。
lyrics
ねぇ考えなくてもいいよ
口先じゃ分かり合えないの
この音に今は乗ろうよ
忘れないでいたいよ
身体は無彩色 レイドバック
ただうねる雨音でグルーヴ
ずっと二人で暮らそうよ
この夜の隅っこで
ねぇ不甲斐ない僕らでいいよ
って誘ったのは君じゃないの
理屈だけじゃつまらないわ
まだ時間が惜しいの?
練り歩く景色を真空パック
踏み鳴らす足音でグルーヴ
まるで僕らはブレーメン
たった二人だけのマーチ
さぁ息を吸って早く吐いて
精々歌っていようぜ 笑うかいお前もどうだい
愛の歌を歌ってんのさ あっはっはっは
精々楽していこうぜ 死ぬほどのことはこの世に無いぜ
明日は何しようか 暇ならわかり合おうぜ
ねぇ考えなくてもいいよ
踊り始めた君の細胞
この音に今は乗ろうよ
乗れなくてもいいよ
想い出の景色でバックパック
春風の騒めきでグルーヴ
もっと二人で歌おうよ
暇なら愛をしようよ
さぁ息を吸って声に出して
精々歌っていようぜ 笑われてるのも仕方がないね
何もかも間違ってんのさ なぁ、あっはっはっは
精々楽していこうぜ 馬鹿を装うのも楽じゃないぜ
同じような歌詞だし三番は飛ばしていいよ
さぁ息を吸って早く吐いて
ねぇ心を貸して今日くらいは
精々歌っていようぜ 違うか
お前ら皆僕のことを笑ってんのか?なぁ
精々楽していこうぜ 死ぬほど辛いなら逃げ出そうぜ
数年経てばきっと一人も覚えてないよ
ぜえぜえ歌っていようぜ 身体は動く?お前もどうだい
愛の歌を歌ってんのさ あっはっはっは
精々楽していこうぜ 死ぬほどのことはこの世に無いぜ
明日は何しようか 暇なら笑い合おうぜ
そのうちわかり合おうぜ
4. チノカテ
アンドレジッド「地の糧」
「地の糧」という言葉の響きから、アンドリュー・ワイエスの絵画「クリスティーナの世界」を思い浮かべた。
ワイエスは下半身付随の女性が、自らの力で丘を上がっていく場面を描いている。
この絵のためにワイエスは、隣人である女性の姿、自分の家の周辺、水たまりと、すぐ側にあるありふれたもののスケッチを重ねた。
無名の人々の生活の中に美を見出そうとするその精神は、「書を捨てよ街へ出よう」の思想に通じている。
lyrics
夕陽を呑み込んだ
コップがルビーみたいだ
飲み掛けの土曜の生活感を
テーブルに置いて
花瓶の白い花
優しすぎて枯れたみたいだ
本当に大事だったのに
そろそろ変えなければ
あ、夕陽。本当に綺麗だね
これから先のもっと先を描いた地図はないんだろうか?
迷いはしないだろうか
それでいいから そのままでいいから
本当はいらなかったものもソファも本も捨てよう
町へ出よう
本当は僕らの心は頭にあった
何を間違えたのか、今じゃ文字の中
花瓶の白い花
いつの間にか枯れたみたいだ
本当に大事だったなら
そもそも買わなければ
あ、散った。それでも綺麗だね
ずっと叶えたかった夢が貴方を縛っていないだろうか?
それを諦めていいと言える勇気が少しでもあったら
本当に欲しかったものも鞄もペンも捨てよう
町へ出よう
貴方の欲しがった
自分を捨ててしまった
本当に大事だったのに
今更思い出す
花瓶の白い花
枯れたことも気付かなかった
本当に大事だったのは
花を変える人なのに
あ、待って。本当に行くんだね
これから先のもっと先を描いた地図はないんだろうか?
迷いはしないだろうか
それでいいから そのままでいいから
本当はいらなかったものもソファも本も捨てよう
それでいいから
貴方の夜をずっと照らす大きな光はあるんだろうか?
それでも行くんだろうか
それでいいから そのままでいいから
全部を読み終わったあとはどうか目を開けて
この本を捨てよう、町へ出よう
5. 雪国
川端康成「雪国」
「雪国」のラストシーンの燃える芝居小屋。男女は映画のフィルムを観るようにそれを見ている。エドワード・ホッパーの絵画を参考に。
lyrics
国境の長いトンネルを抜けると雪国は
底冷えの夜の静けさを白く帯びている
雪景の古い街並みを横目に雪国は
貴方との春の思い出がただ蔓延っている
僕の躊躇いが月に被さってまるで海の底ね
ぼうと座って水面に映った僕らを見ている
食卓と長い小節を跨いで雪国は
花韮の花の静けさをただ嗅ぎ取っている
貴方の涙風に舞い散ってまるで春の中ね
ぼうと座ってスープに映った僕らを見ている
僕らの憂いが日々日々積もってまるで雪の国ね
どうか躊躇って 貴方も想って雪が溶けるまで
愛が解けるまで
国境の長いトンネルを抜けると僕たちは
底冷えの夜の静けさを白く帯びていた
6. 月に吠える
萩原朔太郎「月に吠える」
月に吠える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。「月に吠える」の序文に載せられたその一文を見た時、詩の構想が出来上がった。波止場の影からこちらを見ている何かがいる。じっと見つめている。それは創作の指を突き動かす衝動であって、魂と呼ばれる獣の姿でもある。
絵について。詩集の序文から、彫刻家ジャコメッティの作品「犬」の姿を思い浮かべた。痩せ細った犬の影が街を徘徊する。
lyrics
路傍の月に吠える
影一つ町を行く
満ちることも知らないで
夜はすっと深くまで
気が付けば人溜まり
この顔を眺めている
おれの何がわかるかと
獣の振りをする
一切合切放り出したいの
生きているって教えてほしいの
月に吠えるように歌えば嗚呼、鮮やかに
アイスピックで地球を砕いてこの悪意で満たしてみたいの月に吠えるように歌えば
嗚呼、我が儘にお前の想うが儘に
青白い路傍の月
何処だろう、と人は言う
誰にも見えていないのか
この醜い獣
指を差した方へ向く
顔の無いまま動く何かがおれを見ている
波止場のあの影で
一切合切信じていないの
誰もお前に期待していないの
月に吠えるように歌えば嗚呼、鮮やかに
硬いペンを湖月に浸して波に線を描いてみたいの
月に吠えるように歌えば嗚呼、艶やかに
時間の赴くままに
皆おれをかわいそうな病人と、そう思っている!
一切合切放り出したいの
ま、まだ世界を犯し足りないの
月に吠えるように歌えば、嗚呼鮮やかに
アイスピックで頭蓋を砕いて温いスープで満たしてほしいの
月に吠えるように歌えよ
嗚呼、喉笛の奥に住まう獣よこの世界はお前の想うが儘に
路傍の月に吠える
7. 451
レイ・ブラッドベリ「華氏451度」
絵について。原作小説では社会からの検閲が描かれるが、ここでは創作者自身の心の中での自己検閲を描いた。 作っては壊していく創作の時間。
lyrics
あの太陽を見てた
深く燃えてる見れば胸の辺りが少し燃えてる
道を行く誰かが声を上げた
「見ろよ、変な男」と笑いながら
指の先で触れた紙が一つ遂に燃えた
さぁ引火して 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして
喜びを愛して
さぁ昇華して 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って
ほら、集まる人の顔が見える
俺の蒔いた炎の意図を探してる
見ろよ、変な奴らだ
そんなに声を荒げて
たかが炎一つに熱を上げてる
燃えろ 早く 響く怒声の中で
紙の束よ赤く盛って
あぁ面倒くせえ さぁ燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして
悲しみも愛して
さぁ放火して 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って
触れて消して触れて消して
触れて胸の窓を開けて
早く燃えて灰を見せて
奥の奥に燻ぶる魂に
さぁ引火して 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして
妬けるほど愛して!
さぁ放火して 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして
飽きるまで愛して
さぁ消費して 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って 踊って
さぁ創造して 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして 燃やして
8. パドドゥ
芥川龍之介「舞踏会」
芥川龍之介の「舞踏会」から着想を得て、想い出の中を踊る二人の人物を詩と曲に落とし込んだ。想い出の中で踊る人物は、過去の自分達に見える。雪国を経て二人の関係は終わりを迎え、列車は草原の向こうへと走っていく。
パドドゥはバレエの用語であり、男女二人の踊りを指す。
lyrics
優しい風の音が頬撫でる
雲間鮮やか、揺れ花菖蒲
この場所を僕らは覚えてる
立ちくらみ、不格好
風に流されて腰を下ろす原
夏草は肌に擦れるまま
思い出の中に貴方はいる
優しい風の音が頬撫でる
土用の縁側、言葉足らず
雲の下へ続く田舎道
夏木立、不格好
風に流されて足を運ぶまま
あの頃指差して進むまま
「さぁさぁもっと踊っていようよ
腕を引かれるまま、情け無い顔のままで
一生踊って暮らしていようよ
もう考えないでいいよ」
優しい風の音が頬撫でる
夏休み、校舎の七不思議
あの夜を僕らは覚えてる
立ちすくみ、不格好
風に流されて歩く長廊下
宵闇は鼻に擦れるまま
「さぁさぁもっと踊っていようよ
胸を焦がせ今は泣き止んだ顔のままで
一生踊って暮らしていようよ
疲れたら寝ればいいよ」
夜の校庭、たった二人だけの舞踏会
さながら舞台裏のパ・ド・ドゥ
僕ら芥川の小説みたいに
今だけの想い出になろう
「さぁさぁもっと踊っていよう
深く息を吸うように
一生踊って暮らしていよう
さぁさぁもっと踊っていようよ
いつか出会えるならふざけた笑顔のままで
一生踊って暮らしていようよ
そう考えたっていいよ
さぁさぁもっと踊っていようよ」
9. 又三郎
宮沢賢治「風の又三郎」
「風の又三郎」が持つ神性、あの子は風の子だったんじゃないかというその不思議な期待。現代の閉塞感を全て吹き飛ばす神様として、現代の又三郎を描く。
lyrics
水溜りに足を突っ込んで
貴方は大きなあくびをする
酷い嵐を呼んで欲しいんだ
この空も吹き飛ばすほどの
風を待っていたんだ
何もない生活はきっと退屈過ぎるから
風を待っていたんだ
風を待っていたんだ
吹けば青嵐
言葉も飛ばしてしまえ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
どっどど どどうど
風を呼ぶって本当なんだね
目を丸くした僕がそう聞いたから
ぶっきらぼうに貴方は言った
「何もかも思いのままだぜ」
風を待っていたんだ
型に合った社会は随分窮屈すぎるから
「それじゃもっと酷い雨を!
この気分も飛ばす風を」
吹けば青嵐
何もかも捨ててしまえ
今に僕らこのままじゃ
誰かも忘れてしまう
青い胡桃も吹き飛ばせ
酸っぱいかりんも吹き飛ばせ
もっと大きく 酷く大きく
この街を壊す風を
吹けよ青嵐
何もかも捨ててしまえ
悲しみも夢も全て飛ばしてゆけ、又三郎
行けば永い道
言葉が貴方の風だ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
どっどど どどうど
10. 靴の花火
宮沢賢治「よだかの星」
成仏をテーマに詩を書いた楽曲。空を高く飛び上がり、上空へ、その先の太陽へと向かう姿をよだかに重ねる。
lyrics
ねぇ ねぇ
何か言おうにも言葉足らずだ
空いた口が塞がらないから から
ねぇ ねぇ
黙りこくっても言葉要らずだ
目って物を言うから
忘れていくことは虫が食べ始めた結果だ
想い出の中じゃいつも笑ってる顔なだけ
夕暮れた色 空を飛んで
このまま大気さえ飛び出して
真下、次第に小さくなってくのは
君の居た街だ
靴の先に花が咲いた
大きな火の花が咲いた
心ごと残して征こう、だなんて憶う
そんな夏が見えた
ねぇ ねぇ
君を知ろうにもどっちつかずだ
きっと鼻に掛けるから
清々することなんて何にもないけど
今日も空が綺麗だなぁ
僕の食べた物 全てがきっと生への対価だ
今更な僕はヨダカにさえもなれやしない
朝焼けた色 空を舞って
何を願うかなんて愚問だ
大人になって忘れていた
君を映す目が邪魔だ
ずっと下で花が鳴った
大きな火の花が鳴った
音だけでも泣いてしまう、だなんて憶う
そんな夏を聞いた
ねぇ ねぇ
空を飛ぼうにも終わり知らずだ
きっと君を探してしまうから から
夕暮れた色 空を飛んで
この星の今さえ抜け出して
真下、次第に小さくて
消えたのは君の居た街だ
夏の空に花が咲いた
大きな火の花が咲いた
いつまででも泣いていたい、だなんて憶う
そんな夏が消えた
11. 老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」
絵について。ロシアのアニメーション作家、アレクサンドル・ペトロフの映像作品のその数日後を想像して描いた。 敗れた労働者。英雄としての休息。少年の麦わら帽子が老人の顔を包む。
音楽について。小説の中で、老人はアフリカの砂浜で戯れるライオンたちの姿を夢想する。
それは若く強かった自分への懐古であり、二度と手に入らないそれへの郷愁だと解釈する。
自分にとっての「アフリカのライオン」は何だろうか、と考えた時、出てきたのは「創作の出口」だった。
人は想像力で物を書き、何かを作っている。想像力は無限だとよく人は言う。
だが悲しいことに、私たちからは自身で想像しうる事柄以上のものは出てこない。想像力は所詮、自分の頭蓋骨の内側で起こる範疇しか描けない。
誰も見たことがない、自分ですらも知らない景色を描くためにはこの頭蓋骨はあまりにも狭すぎる。
それは絶対に辿り着くことのない出口であって、遠く海の向こう側にある「アフリカのライオン」だと、今でも思う。
lyrics
靴紐が解けてる 木漏れ日は足を舐む
息を吸う音だけ聞こえてる
貴方は今立ち上がる 古びた椅子の上から
柔らかい麻の匂いがする
遥か遠くへ まだ遠くへ
僕らは身体も脱ぎ去って
まだ遠くへ 雲も越えてまだ向こうへ
風に乗って
僕の想像力という重力の向こうへ
まだ遠くへ まだ遠くへ
海の方へ
靴紐が解けてる 蛇みたいに跳ね遊ぶ
貴方の靴が気になる
僕らは今歩き出す 潮風は肌を舐む
手を引かれるままの道
さぁまだ遠くへ まだ遠くへ
僕らはただの風になって
まだ遠くへ 雲も越えてまだ向こうへ
風に乗って 僕ら想像力という縛りを抜け出して
まだ遠くへ まだ遠くへ 海の方へ
靴紐が解けてる 僕はついにしゃがみ込む
鳥の鳴く声だけ聞こえてる
肩をそっと叩かれてようやく僕は気が付く
海がもう目の先にある
あぁまだ遠くへ まだ遠くへ
僕らは心だけになって
まだ遠くへ 海も越えてまだ向こうへ
風に乗って 僕の想像力という重力の向こうへ
まだ遠くへ まだ遠くへ
海の方へ
僕らは今靴を脱ぐ さざなみは足を舐む
貴方の眼は遠くを見る
ライオンが戯れるアフリカの砂浜は
海のずっと向こうにある
12. さよならモルテン
セルマ・ラーゲルレーヴ「ニルスのふしぎな旅」
久々に見た友人が、今も変わらずに物を作っていた。あの頃から何一つ変わらない表情をしていた。どうしてか胸が詰まった。
その時に思い出したのが幼い頃読んだ児童文学、ニルスのふしぎな旅だった。ニルスという少年がガチョウのモルテンの背に乗って旅をする話。
モルテンを真似て、空を飛ぼうとする子供達を描いた詩を書こうと考えた。月日を経て変わらない何かを見る、それに心を揺さぶられる。自分にとっては、創作を描いた詩でもある。
スウェーデン、ガムラスタンの街を駆ける少年たちは路地から空を見上げ、何処か遠くを夢見ている。
lyrics
借りた本を片手に持って
川沿いの歩道を行く
読み終わりまであと2ページ
その先が知りたくない
鳥に乗って旅する少年
どこまでも北へ行く
相棒はガチョウのモルテン
そんな小説を読む
さよならモルテン
いつも僕らは飛ぼうとしていた
腕を開いて、高く跳ねた
何も起こらない癖に
さよならモルテン
君は転がりながら笑った
土の匂いが少し香る
胸が詰まりそうになる
夏が来ていた
悲しみって資産を持って
夏前の道を行く
読み終わりまであと2ページ
まだ先が知りたくない
少し伸びた背丈を追って
いつもの丘へ駆ける
空を飛んだガチョウみたいに
僕らは腕を開く
さよならモルテン
僕らそれでも飛ぼうとしていた
実は自分が特別じゃないとただ知りたくないだけで
さよならモルテン
君は転がりながら笑った
大人になっていくことを
少しも知らない顔で
夏が来ていた
また一つ背が伸びる
いつしか遠くなる
少しずつ離れてく
別れた枝のよう
褪せた本を片手に持って
懐かしい道を行く
あの丘まで数百歩
誰かがそこにいる
さよならモルテン
君は今でも飛ぼうとしていた
目は煌めいて、あの頃と何も変わらないままで
さよならモルテン
僕ら飛べないことが愛おしいとわかる気がして
少し香る 胸が詰まりそうになる
君が見ていた
笑う顔も一つも褪せないままで夏が来ていた
褪せた本を片手に持って
川沿いの歩道を行く
読み終わりはあと1ページ
最後の紙を捲る
さよなら、モルテン
13. いさな
ハーマン・メルヴィル「白鯨」
メルヴィルの「白鯨」の姿を、美しい人物に重ねる。海の雄大さをそのまま表したような貴方の、その輪郭を一つ一つ描写していく。
lyrics
あなたの胸びれ
窓辺を泳いで
柔らかに溶けた
琥珀のよう
あなたの鼻先
背びれと口髭
静かなまなこは
まるで夜の
話して 鳴いて
僕ら波を掻いてた
陸に想い馳せるように
瞼を落として 蓋して
すぐは覚めないほど眠って
呼吸を吹かして
さぁ深く泳いで 泳いで
眠りの浅いその波間を
白く微睡みながら
あなたのさえずり
ソファの木漏れ日
柔らかに揺れた
海辺のよう
笑って 泣いて
僕ら波を待ってる
じきに思い出せるように
波間を旅して 潜って
息も出来ないほど深くへ
呼吸を吹かして
さぁ深く泳いで 泳いで
あなたの長いその尾びれを
波に横たえながら
話して 鳴いて
僕ら波を掻いてた
いつかまた会えるように
瞼を落として 蓋して
夢も覚めないほど眠って
もう自分を許して
さぁ深く泳いで 泳いで
眠りの浅いその波間を
白く微睡みながら
14. 左右盲
オスカー・ワイルド「幸福な王子」
幼い頃から妙な生きづらさがあった。それに左右盲という名前がついていることは大人になってから知った。
左右の区別が咄嗟につかない。判断に時間がかかる。頭にもやがかかったみたいに真っ白で、わからない瞬間がある。
それを取り繕ってわかったような顔で左右を当てはめて、会話を進める癖が自分にはあった。
はっきりと区別しないまま、なんとなくで当てはめる左右。
それは目の前の誰かが居なくなって、初めて問題として浮き彫りになる。
あの垂れていた右眉は実は左眉だったのかもしれない。頬をついていた右手は、実は左手だったのかもしれない。
もういない相手に対してその左右を想像する。そういう、ごく私的な詩を書こうと思った。
絵について。平皿へと宝石を運ぶ青い燕。二人の前にはマグカップが置かれている。
デンマークの室内画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの描いた部屋を参考にしている。
lyrics
君の右手は頬を突いている
僕は左手に温いマグカップ
君の右眉は少し垂れている
朝がこんなにも降った
一つでいい
散らぬ牡丹の一つでいい
君の胸を打て
心を亡れるほどの幸福を
一つでいいんだ
右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を
一人行くその静けさを
その一つを教えられたなら
君の左眉は少し垂れている
上手く思い出せない
僕にはわからないみたい
君の右手にはいつか買った小説
あれ、それって左手だっけ
一つでいい
夜の日差しの一つでいい
君の胸を打つ、心を覗けるほどの感傷を
一つでいいんだ
夏に舞う雹のその中も手探りで行けることを
君の目は閉じぬことを
僕の身体から心を少しずつ剥がして
君に渡して その全部をあげるから
剣の柄からルビーを この瞳からサファイアを
鉛の心臓はただ傍に置いて
一つでいい
散らぬ牡丹の一つでいい
君の胸を打て
涙も忘れるほどの幸福を
少しでいいんだ
今日の小雨が止むための太陽を
少しでいい
君の世界に少しでいい僕の靴跡を
わかるだろうか、君の幸福は
一つじゃないんだ
右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を
君が行く長いこれからを
僕だけは笑わぬことを
その一つを教えられたなら
何を食べても味がしないんだ
身体が消えてしまったようだ
貴方の心と 私の心が
ずっと一つだと思ってたんだ
15. アルジャーノン
ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を
アルジャーノンは小説内に出てくるネズミで、迷路を脱出するタイムを競う実験をさせられている。
主人公のチャーリーはそれを上から眺めながら、妙な親近感を覚えている。
アルジャーノンを幼い頃の自分、創作を始めたばかりの壁の向こうに出口があると信じて止まらない自分に置き換えて、詩を書いた。
絵について。100年前の白黒写真に写った人物たちを参考に描いている。
人間が自らの実人生を生きていた時代への憧れと祝福。
lyrics
貴方はどうして僕に心をくれたんでしょう
貴方はどうして僕に目を描いたんだ
空より大きく 雲を流す風を呑み込んで
僕のまなこはまた夢を見ていた
裸足のままで
貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく
少しずつ膨らむパンを眺めるように
貴方はゆっくりと走っていく
長い迷路の先も恐れないままで
貴方はどうして僕に名前をくれたんでしょう
貴方はどうして僕に手を作ったんだ
海より大きく 砂を流す波も呑み込んで
小さな両手はまだ遠くを見てた
あくびを一つ
僕らはゆっくりと眠っていく
とても長く 頭の真ん中に育っていく大きな木の
根本をゆっくりと歩いていく
長い迷路の先を恐れないように
いつかとても追いつけない人に出会うのだろうか
いつかとても越えられない壁に竦むのだろうか
いつか貴方もそれを諦めてしまうのだろうか
ゆっくりと変わっていく
ゆっくりと変わっていく
ゆっくりと変わっていく
僕らはゆっくりと忘れていく とても小さく
少しずつ崩れる塔を眺めるように
僕らはゆっくりと眠っていく
ゆっくりと眠っていく
貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく
あの木の真ん中に育っていく木陰のように
貴方はゆっくりと走っていく
長い迷路の先も恐れないままで
確かに迷いながら
第2章:踊る動物
夏目漱石「夢十夜」より章題を借りて。
踊る動物達をテーマに、人、蛙、蝙蝠、鹿、梟、兎、カナリア、羽虫、カメレオン、猫を描く。
音楽について。ループするメロディをテーマに。
小節単位、フレーズ単位、もしくは一音単位で繰り返されていく。
人間の手によって演奏された音だけで構成されている。
第三夜、第五夜はバンドによる演奏。その他は作曲者のn-buna一人による、擬似的ホームオーケストラ。
アップライトピアノは調律から日が経ったものを使用。少しルーズで懐かしい響きがした。
1. 第一夜
踊りながら、百合に変化していく女性。太陽が昇り沈んでいく。ランプが灯り月が昇る。
「気づいたら百年経っていた。」
lyrics
貴方だけを憶えている
雲の影が流れて往く
言葉だけが溢れている
想い出は夏風、揺られながら
朝目が覚めて歯を磨く
散歩の前に朝ご飯
窓の向こうにふくれ雲
それを手帳に書き留めて
歌う木立を眺めます
通りすがりの風が運んだ
花の香りに少しだけ春かと思いました
貴方だけを憶えている
雲の影が流れて往く
言葉だけが溢れている
想い出は夏風、揺られながら
昼は何処かで夢うつつ
ふらり立ち寄る商店街
氷菓を一つ買って行く
頬張る貴方が浮かびます
想い出ばかり描きます
この詩に込めた表情は
誰にもわからなくていい
いつか会いに向かいます
貴方だけを憶えている
雲の影が流れて往く
言葉だけが溢れている
想い出は夏風、揺られながら
夜に花火を観ています
いつかみたいな人混みで
名前も知らず呼んでいた
白い花を一輪持って
隣町から帰ります
列車の窓を少し開いて
夜がひとひら頬撫でて
風揺れる、髪が靡く
貴方だけを憶えている
雲の影が流れて往く
言葉だけが溢れている
想い出は夏風、揺られながら
この歌は夏風、揺られながら
朝目が覚めて歯を磨く
散歩の前に朝ご飯
丘の向こうにふくれ雲
ふいに何かに気付きます
心が酷く震えます
白百合香る道を走って
やっと貴方に出逢えた
そんな夢を見ました
貴方は僕に笑います
ずっと待っていましたと
2. 第二夜
月光の下の蛙。
3. 第三夜
黒いインクが蝙蝠のように踊る。
写真家アーヴィング・ペンによって撮られたマイルス・デイヴィスを参考に。
音楽はモードジャズをテーマに。教会旋法のうちのドリアンモード。
バンド演奏での録音。演奏はセッション的な一発録りとなった。
4. 第四夜
眠っている鹿に寄り添う少女。
音楽は、この絵を心臓の鼓動を聞き取ろうとしている少女と捉えて書いた。
心臓の音をピアノで表現する。その一音にエフェクトがかかり、徐々に空間を広がっていく。
指笛を使って梟の遠鳴きを真似する。
5. 第五夜
ワルツのリズムから派生したピアノ。
夢の中で踊り出す男。その体から梟が飛び立つ。
スペインの画家ゴヤの版画を参考に。
6. 第六夜
赤ん坊を抱いた感触。様々な人からの贈り物の沢山の毛布。
7. 第七夜
インスピレーションを運ぶカナリア。
バッハを再解釈したピアニスト、グレングールドのポーズを参考にし、少年としての彼の姿を思い浮かべ描いた。
グレングールドは歌いながらピアノを弾いたことで知られる。
楽曲はアイデアが降りてくる鼻歌のメモから始まる。一楽器ずつ和音が増えていくループミュージック。
クラシックの持つニュアンスを多重録音で現代的に再構築する。
8. 第八夜
蝗害のように戦争が始まる。
パリの眼と呼ばれた写真家、ブラッサイの写真を参考に、多重露光で絵で描く。
音楽について。戦争の足音がタンバリンのリズムとして聞こえ始める。
西洋音楽に影響を受け、取り入れる日本人という自意識。その自分をヨーロッパの街を行く羽虫と重ねる想像をする。
西洋楽器のマンドリンが日本音階(都節音階)を奏でている。
9. 第九夜
ホテル、ネオン、歓楽街。
ネオンの色をピアノ、民族太鼓、アナログシンセサイザーJUNO-60で表現。
10. 第十夜
画家フラシス・ベーコンのアトリエをモデルに。画家のいなくなったアトリエで猫は泣き続ける。
音楽について。コロコロと気分が変わる猫っぽく自由なイメージで、行き先を決めないフリーのピアノ演奏。
初めは悲しげに。主人はもういない。
時間が経つにつれ、段々と楽しくなる。一人の部屋を謳歌する。
そうしてまた、寂しくなる。